質問されたら質問に答える
これは一見当たり前のようですが実は結構難しいようです。私の部下やまわりを見渡してもこれができる人はなかなかいません。課長級でもできない人が少なくありません。どういうことかというと論点がずれていくんです。
さすがに課長級よりも上の役職の人でこれができない人は見ませんので、案外 課長止まりかどうかの境界線がここにあるのかもしれません。
後ろめたいことがあると特に陥りやすいパターンです。
<例>
昨日までにやっておいてと頼んでたあの調査は終わった?
いやあ、昨日中に終わらせる予定だったんですが突発の問題が起きちゃって。
で?
その対応に思いのほか時間が掛かってしまって。
それで?
しかも昨日は定時の日だったので定時に帰らせられてしまって。
・・・・・・
不毛なやり取りが続いているように思えませんか。「突発の問題が入る」「対応に時間が掛かる」「仕事が途中でも定時に帰らせられる」というのがもし問題ならばそれはそれで解決する必要があります。しかし論点はそこではなく「調査が終わったかどうか」です。頼まれた仕事を終わらせていないという後ろめたさが言い訳に走らせてしまったのです。ではどう答えれば相手のストレスを軽減できるのでしょうか。
まずは質問に答える: アンチクライマックス法
先ほどの質問「昨日までにやっておいてと頼んでたあの調査は終わった?」の核となるのは「調査が終わったかどうか」なのでもし終わっていなかったら「終わっていません」が結論です。頼まれたことができていないので申し訳ないという気持ちも添えて
申し訳ありません。まだ終わっていません。
が最初に答えるべきことです。しかしこれでは相手は満足しません。その次の説明が重要です。
要点を押さえて説明する:YWT(またはYWwT)
相手にとって「今どこまで進んでいるか」「いつ終わるのか」が気になるところなので今の状況と情報を提供しましょう。(あくまで申し訳なさそうに)
「まだ終わっていない」と言われたら相手は少し険しい表情で「それで?」と次の言葉を促すでしょう。(ブラック企業ならば罵声を浴びるかもしれません。)その前にYWTで状況と対応を説明しましょう。
Y: やったこと
現段階で✖️✖️以外の調査は終わっています。
W: わかったこと
ここまでの調査結果から◯◯が原因だと思われます。
(w: わからないこと←必要に応じて)
ただ△△という想定外の反応も起こっています。
T: 次にやること
調査は本日の午前中に終わらせますので結果の確認を午後からお願いできますか?
相手としても頼んだ調査の進捗と結果がいつ出るかがわかりますのでストレスと怒りは少しだけやわらぎます。しかし今度は本当にそんな目論見通りにことが進むのか不安になります。「本当に大丈夫か?」「ちゃんとやれるのか?」が次の相手の言葉でしょう。なんと言っても期待を一度裏切っているので致し方ありません。
論理的に説明する: PREP法
PREP法は論理的でわかりやすい文章を書くフレームワークですが、報告書やプレゼンテーションだけでなく質疑応答においてもこのフレームワークを使えば相手にわかりやすく自分の考えを伝えることができます。
本当に午前中にできるのか?
Point(要点) (この場合は質問に対するズバリの答えが要点)
はい、午前中にできます。
Reason(理由)
ほとんど終わっていて残っているのはサンプル二つの元素分析だけですから。
Example(例)
元素分析は一つ30分ほどでできるので二つで1時間あればなんとかできます。
Point(再び要点)
ですから結果の考察も合わせて午前中に終わらせられると思います。
遅れて申し訳ありませんでした。早速取り掛かります。
どうですか。あとは実行あるのみです。決してハッタリにならないように、真摯に仕事に向き合ってください。
以上は言い訳事例でしたが反対に自慢事例もあります。あれをやった、これをやったと結果に至るまでのプロセスを延々と喋って結論になかなかたどり着かないパターンです。自慢も時間の無駄です。
上記で紹介した三つのフレームワークを習得すれば報告書・プレゼン作成だけでなく、報告会での発表・報告でもしっかり要点を伝えることができます。特に部門長や役員が出席する場合、彼ら/彼女らは論理的な考え方をして、かつ時間の無駄を嫌いますのでアンチクライマックスを心掛けましょう。
いずれにせよ、聞いてもらって、相手に伝わってなんぼですから。
このフレームワークで報告会でも臨機応変に報告しよう
報告会はなかなか時間通りに進みません。5分の持ち時間でダラダラと10以上喋ったり、縮めろと言っているのに「わかりました」と返事だけはよくて時間はそのままだったり、早口にして縮めようとしたり、司会進行泣かせのやからばかりです。
なぜ縮められないかというと、クライマックス法のように話の手続きを踏みながら次の話に進めて結論に至るので途中を跳ばせないようです。
これに対してアンチクライマックス法・PREP法なら最初に要点を話して後は修飾的・冗長的な内容をつなげている構成なのでいくらでも縮めることができます。最悪、要点だけ話せばよいのですから。
これらのフレームワークは覚えておいて決して損はしないことがわかるでしょう。
自分のものにするまでは何かに答える時に「結論から言うと」という枕言葉を付けてみてはどうでしょうか。とは言っても毎回言われると聞き手もうざったいと思うので心のなかでそう言ってから答えるようにしましょう。
ところで私の部下で毎回「結論から言うと」から始めるのが口癖になった者がいました。心がけはよいのですが、話の途中で「結論じゃないじゃないか」と突っ込みたくなる内容もしばしばありました。やはり鍛錬も必要です。
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